photo credit: Ippei & Janine Naoi via photopin cc
山に生えている木をよく見ると、スギ、ヒノキ、マツといった針葉樹林だけの森が日本には多くあります。しかしこれは本物の森ではありません。人が人工的に植えたものは手入れをしないと維持できませんが、本物の森は違います。
本物の森とは、その土地の昔から生えている木、多くはシイ、カシ、タブなどの照葉樹林が密植混植している森です。本物は簡単にはなくならない、そう訴えるのは、生態学者で横浜国立大学名誉教授、宮脇昭先生です。
宮脇昭先生に感銘を受けて作った物語。
物語は、ノックスの棲む森にやってきた麦わら帽子のおじいさんをきっかけにはじまります。おじいさんは森で何をしているのでしょうか?知りたがりのこの小さな宇宙人は姿を見られないようにして観察しているのですが、おじいさんがある時来なくなります。それにはある理由がありました。
宮脇先生の植樹祭の体験。
photo credit: B&G特派員の「現場からお伝えします!」~全国のB&G海洋センター・海洋クラブの活動紹介~
7年ほど前になりますが、縁あって宮脇先生の講演会に行くことになり、植樹をしました。その時の体験がこの物語もとになっています。麦わら帽子に長靴姿は、先生のいつものスタイル。知らなければ誰も大学教授とは思わない、どう見てもただの畑仕事のおじいさんです。それがタダ者ではない木を植える人というのがまたチャーミングで、研究室の机の上ではなく、80歳を越えてもなお、現場で実際に活動されている姿勢に感動しました。
photo credit:AXU Web Magazine
お手本は命を守る鎮守の森。
photo credit: 篠山市 郊外の神社 【おぉたむ すねィく探検隊】 ~photo by Autumn Snake
その時、覚えて帰ってくださいと言われた樹木が、カシ、シイ、タブノキ、など10種類ほどの樹木でした。3回くりかえせば覚えられると言われたのに、そのほとんどをすっかり忘れてしまう記憶力のなさで、今でも覚えているのは、その土地に昔から生えている木を植えるということです。
先生が理想とされていたのは日本各地にある鎮守の森。何百年も何千年も前から続くその土地の森です。そして鎮守の森はその土地の大切な場所にあり、そこを守っているともおっしゃっていました。関東大震災でも、焼け残ったというお話もありました。本物の森は災害に強いという持論をおもちです。
9千年先の次の氷河期まで続く森をつくる。
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植樹イベントの終わりに、参加者ひとりひとりと握手をされ「僕はもう年だからあと30年木を植えるけど、あなたたちはまだ若いから60年植えてください」と言われました。
温かくてごわごわとした木を植える人の手の感触は今でも忘れられません。今日もきっと世界のあちこちで、並みはずれた行動力と強い意志で木を植える活動をされていることと思います。